2025.02.27MAGAZINE結ぶ手、けせらと咲き乱れ、

『結ぶ手、けせらと咲き乱れ、』レポート

ワンシチュエーションに咲き誇る、花と笑いと人間模様

ILLUMINUSが贈る、“花とエンタメで心と心を結ぶ”ワンシチュエーションコメディシリーズ『咲女花劇』。その第四弾となる『結ぶ手、けせらと咲き乱れ、』が、2025年2月、六行会ホールにて上演された。

本作には、シリーズ第一弾より登場し続けている桐野りのこ(植野祐美)をはじめ、各作品から続投したキャラクターたちが一堂に会し、まさに“豪華共演”と呼ぶにふさわしい賑やかさが広がった。

舞台は、一つの教会。主演を務めるのは、ILLUMINUSの代表作『女王ステ』シリーズなどで存在感を放つ生田輝と、『TOKYO COL-CUL COMEDY』などでコメディセンスに定評のある小山百代。二人が演じるウェディングプランナー・花瀬良せらと天道むすぶを中心に、「挙式トリプルブッキング」という一大トラブルをめぐるドタバタ劇が繰り広げられた。

笑いの中に滲む人間ドラマ

“天才ウェディングプランナー”の異名を持つ花瀬良せらは、SNS映えと成功至上主義に囚われながらも、やがて自身の過去や「幸せの本質」と向き合っていく。彼女の“過去の栄光”と“孤独”が徐々に明かされていく構成は見事で、作・演出を手がけた23による緻密な伏線回収と台詞の妙が際立った。

一方で、せらと対をなす天道むすぶは、真面目で実直な現場主義のプランナー。かつてはせらと深い絆で結ばれていたが、今ではすれ違い、ぶつかり合う関係に。二人の会話はまさに“火花を散らす”ようで、舞台に豊かな熱量をもたらしていた。

生田輝と小山百代のW主演は圧巻。生田の持つ強さと脆さ、小山の真っ直ぐな優しさとユーモアが絶妙に絡み合い、二人の関係性の変化が観客の心を揺さぶった。

個性的なキャラクターたちが織りなす祝祭的カオス

シリーズ全作に登場している桐野りのこをはじめ、SNSに囚われる写理しゃえ、恋愛依存気味の関西女子・日暮屋はあとなど、今作も“クセの強い”キャラクターたちが勢ぞろい。

中でも、三人の“花嫁”が同じ男性・六右衛門との挙式をめぐって繰り広げるバトルは、笑いの連鎖を巻き起こすハイライトとなった。テンポの良い台詞の応酬と振り切った芝居が相まって、舞台は“カオスの祝祭”と化していた。

シリーズを通じて紡がれる、「花」のテーマ

『咲女花劇』シリーズでは一貫して、「花」が物語と心情を象徴するモチーフとして描かれてきた。本作でも「アネモネ」や「ブーケ」といった花が登場し、それぞれのキャラクターが他者との関係を“結び直す”姿が、物語に優しさと深みを与えている。

“映えること”ばかりを追い求めていたせらが、最後に「本当に人を幸せにする式とは何か」に気づいていく過程は、観る者の胸にも静かな感動を残した。

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