晴れやかな舞台装置、色とりどりに照らされる明かり、刺激的な音楽、魅力的な俳優たち──。舞台作品を形づくるさまざまなセクションのなかで、「制作」というポジションが日の目を浴びることは少ない。数多くの作品を精力的に発信し続けるILLUMINUSにおいても、彼ら自身が脚光を浴びることは稀だ。このコラムでは彼ら制作者の仕事を紹介するとともに、「制作」という業務の持つ奥深い魅力について探っていこうと思う。
ビジュアルのプランニングから稽古場の清掃まで。多岐にわたる「制作」という仕事
この記事を読む方は舞台作品の「制作」という言葉を聞いて、まず最初になにを思い浮かべるだろうか。実際の業務内容は予算管理、キャスティング、スケジュール調整、票券管理。あげればキリがない。そのうえ、携わるカンパニーや組織によって業務内容はガラリと変わることもザラだ。
代表・プロデューサー小宮山氏の語る「分業」と「適材適所」。これからますます公演規模も企画数も増していくビジョンに寄せて、ILLUMINUSでは新たな人との出会いが急務だ。今回は拡大期のILLUMINUSの中で、いま実際に「制作」として実務を担当する田邊樹さんの仕事ぶりを紹介する。
はじまりは「当日運営のお手伝い」から
ILLUMINUS制作 田邊樹。大学で演劇を学び、その後別の舞台製作会社に勤務、そこで得た関係性を辿り、出会ったのがILLUMINUS。現在25歳。
「華やかな舞台を楽しくつくる。そのイメージに惹かれて門戸をたたいたのが始まり」
少数精鋭のILLUMINUSのなかでもとりわけ若い。数えきれないほどの実務の中でもっとも好きな仕事は作品のキービジュアル作りとのこと。
「打ち合わせを重ねてデザイナーさんと一緒に作り上げたものが公開されてお客様の反響をもらったときはやっぱりうれしいですね。」
では、実際にキービジュアルが出来上がるまでに田邊さんはどのような業務を担っているのだろうか。
キービジュアルができるまで
公演の顔となるキービジュアル。作品の内容も想起させつつ、主要キャストの魅力もふんだんに表現するために、田邊さんが行っていることを時系列で並べてみた。
ビジュアル撮影風景
撮影の進行をしながら、仕上がりを入念にチェック
舞台「女王幻想花劇」メインビジュアル
「今年イチの出来!」と声を揃えた「女王幻想歌劇」のキービジュアル。田邊さんのアイデアももちろん盛り込まれている。
キービジュアルひとつとっても多くの人間が関わる。それらを繋ぎ、クリエイターたちの力が存分に発揮できる体制を整えるのが田邊さんの役割だ。並行してそのほかグッズの製作も同様のコンセンサスを取り、本番までに間に合わせなければならない。舞台本編に公演初日があるように、グッズ制作にも開幕日は重要な日なのである。
田邊樹の一日のサイクル
上記のキービジュアルひとつとってもいくつもの行程があるが、同時に公演そのものの制作業務も数多く抱える。そこで田邊さんのより具体的な1日の動きを追いかけてみよう。おおよそ「稽古期間中」と「劇場入り期間中」の2パターンに分けられるという。
稽古期間中
稽古期間中は稽古場に入って現場の管理調整をしつつ、公演の事務作業を行う。キャストはもちろんのこと、稽古の進捗に合わせてスタッフ各セクションにも連絡を行っていく必要もある。小道具や衣裳の搬入計画なども制作の調整のもと行われる。
劇場入り期間中・時間割
公演初日は作品とともに制作も初日だ。昼のゲネプロ(最終リハ)にも関係者が客席に入るほかスチールカメラマン、取材記者、各セクションスタッフも観覧するため客席のエリア分けや来場者管理も必要となる。そして本番の運営は外注のロビー責任者と連携を取り、初日の観客を迎える。全ての準備が結実し、独特の緊張と高揚に満ちる日である。
また、合間では次の公演の準備がすでに始まる。作品が切れ目なくつづくILLUMINUSではこのように分担しながら公演企画の運営と進行を行っているとのこと。
進行管理を担う人はどんな業界でもとかく激務になりやすい。舞台の「制作」に対しても同様の先入観があるかもしれない。気になるILLUMINUSでの休日については、月に8日程度のお休みがあり、業務の進行に合わせて比較的自由に自分で休日を振り分けていく、というスタイル。稽古場制作も2人体制で過度な連続勤務がないように整えているという。
分業と適材適所。これからのチーム像
今後さらに企画数、公演数を増やしていきたいと語る代表・プロデューサーの小宮山さん。
「これからはスーパーマン1人に頼って創作を行うのではなく、業務内容と携わる人の適正を見極めて分業と適材適所が大事。複数のチームが並行して創作を行えるように」
そのためにはさらなる人材の登用が急務である。
新たな出会いへの期待
次のステップへ進むILLUMINUS。代表・プロデューサーの小宮山さんが期待する新たな出会いとは。
「経験の有無はあまり関係ない。未経験でもエンタメに携わることに情熱を持って臨んでくれる方が良いですね。
演劇は常にライブであり、そこでは良いことも悪いことも起こる。イレギュラーを楽しんで向かっていく前向きな方がいたらうれしいです。」
演劇にはさまざまな専門職がある。そこには当然、専門知識や経験が必要となってくる。制作は各セクションを横断し、それらを有機的に繋いでいく、いわばコミュニケーションの専門職だ。現場での生のコミュニケーションからメール等での連絡のやりとり、デジタルを活用した事務作業能力、他業界での経験も大いに活かされるポイントだ。実際に肩を並べて働くことになるであろう田邊さんに「どんな人が来てほしいか」たずねたところ、
「人と人を繋いでいく仕事なので、コミュニケーションが好きな方、人との関わりが好きな 人が向いていると思います。情報共有や相談をしっかりとしながら、チームとして一緒に仕事をしていただける方と出会いたいですね。」
人と人を繋いでいく仕事。それこそが正に「制作」の一番の業務なのかもしれない。
ゆくゆくはラインプロデューサーになりたい、でも……
最後に、田邊さんにILLUMINUSでの将来像を聞いてみた。
「いずれはプロデューサーとして一人前になり、 複数の公演を企画するラインプロデューサーを目指してます。
でも今は、まず目の前の仕事をキッチリやりたいですね。 ドンドン先回りして穴が無いように。そのためにできることを一つずつ増やしていきたいです。」
人と人を繋ぎ、作品と観客を繋いでいく。その一端を担う彼の、将来よりも先に地道な今を語る姿に頼もしさを感じた。
取材・文責 佐野木雄太
株式会社ILLUMINUS「制作スタッフ」「プロデューサー業務」募集要項
▼仕事内容
① 企画・公演プロデュース
② 舞台制作業務
▼業務内容
1)企画・会場手配
自分たちで自ら企画を考えることもあれば、様々な異業種の会社などからタイアップの依頼を受ける場合があります。興行になるための企画への落とし込み、適正な公演規模での公演計画を作り、会場を手配します。
2)制作
公演のコンセプトや内容、出演者をとりまとめ、多くのスタッフに業務依頼からリレーションまで取りまとめを行なっていきます。
3)グッズ 制作業務
公演の宣伝ビジュアルやグッズ制作のプランニング・ディレクションを行います。
4)広報・宣伝(プロモーション)
CM・テレビ・雑誌・新聞・SNSなどの各方面に向けたプロモーションを提案、実行します。
公演によって最適なプロモーション方法は毎回異なるので、準備した広告、チラシ・ポスターなどを使い、効果的で効率的なプロモーションの企画を行います。
5)チケット販売の管理
チケット販売を委託する会社(プレイガイド)へ、公演の座席をそれぞれ割り振り、一括して管理します。お客様は、我々がチケット販売を委託をした各プレイガイドを通して、公演のチケットを購入します。公演によっては、併せて企業や官公庁、学校向けに販売を斡旋します。また、公演やチケットに関するお客様からの問い合わせについても対応しています。
6)公演当日の運営
公演前には、事前準備をし、タイムスケジュールを決定し、当日に備えます。公演当日には、各必要人員(スタッフ)を手配し、現場の運営を担います。
公演が円滑に回るよう、会場の仕込みから本番の運営、その後の撤収までを行います。
・応募資格
年齢・ 学歴・経験不問
※経験者優遇
エンターテイメントを通じて、人々を幸せにしたいという想いを持っている方。
・勤務地
都内
※業務内容に応じてリモートワーク可能です。
・雇用形態
常勤スタッフ・業務委託・正社員
・給与
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※基本給は経験や職歴により変動があります。
※休暇について雇用形態により決定しています
・問い合わせ先
info@illuminus-creative.net (株式会社ILLUMINUS採用係)