24.8.28現代によみがえる新たな笑い
~麗和落語二〇二四 夏の陣~公演レポート
「令和」に生きる「麗」しき女性が演じるILLUMINUSオリジナル現代落語シリーズ「麗和落語」。その第十弾となる「麗和落語二〇二四 夏の陣」が、8月4日(日)に東京・R’sアートコートにて行われた。
落語ってなんか難しそうだし…なーんてことは微塵(みじん)もない。日本語のおもしろさと美しさに気づかされるような現代落語が、個性豊かなキャストによって演じられ五者五様のおもしろさを魅せる。
この記事では、ディレイ配信に合わせて本作の見どころをキャスト別にレポート。
1日限りではもったいないその高座を、ぜひ配信で何度も楽しんでほしい。
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千春「どろどろ」
話上手のヨーコと話下手のハナ。怪談をもとにたわいもない会話をしていた2人だが、ハナの怪談を聞いていくと予想外の怖い方向へ!?
夏にぴったりのテーマである「怪談」。2人だけで会話を繰り広げていくストーリーを落語特有の演じ分けで展開させる、1席目からなかなかのカロリーだ。
初の落語挑戦とありフレッシュさが全面に出ていた彼女だが、枕では斬新なコール&レスポンスを行い観客の心を鷲掴みに。
2公演目では少し緊張が和らいだのか枕もアドリブもパワーアップを見せて、同じ人物の同じ噺とは思えぬ驚きも見られた。
駒形友梨「祭囃子」
売れない歌うたいの女の子が、猫に不思議な笛をもらったことで人生が大きく動いていく。夢のような生活の先で待っている結末とは…。
彼女も千春と同じく初めての落語と言いながら、まったく緊張を感じさせない佇まいだ。かわいいらしい声で発せられる「ちゃんかてんつくぴいひゃらら」の音が耳から離れなくなり、登場人物同様に惹きこまれていく。
謎に落ち着きを持ったアドリブも、多様な登場人物の演じ分けも、独特の空気感から放たれることでおもしろさを増していた。
歌が得意な彼女が音痴な歌唱を披露するレアな一面はもちろん、2公演目には、あたたかい観客の対応力で本当のライブのような場面ができあがった奇跡もお見逃しなく。
佐々木未来「明神」
人のいないお堂に忍び込んだ女泥棒・お墨。釈迦如来像を盗み出そうとするが、そこに人が来てしまい…果たしてお墨はお堂から出られるのだろうか?
体調不良で降板した春の陣のリベンジと燃えていた彼女。「前回の稽古は抜け落ちた」と語っていたが、そんなことないだろう!と思わずツッコミたくなるほどの、心地よいテンポと声で常に笑いをさらっていた。
お墨の心理描写はもちろん、何人もの村人をも瞬時に演じ分けるその対応力は、稽古の賜物だけでなくきっと本人のセンスも由来するところだろう。1部と2部で異なったアドリブもぜひ聞き比べてみてほしい。
相良茉優「空知らぬ雨」
空知らぬ雨…涙を意味するこの言葉。「お節が泣けば雨が降る」と言われているある村でのお話。ほとんど泣かないお節と呼ばれるその少女はなぜ泣かないのか、そして村に雨は降るのか…。
3回目の出演となる彼女は緊張していると言いつつも、いつもの笑顔と落ち着きを保っていた印象。
江戸っ子のようなしゃべり方もさまになっており、表情で見せる部分も多いこの噺には、彼女らしさが存分に詰まっていた。
公演後のトークでは、3回目の挑戦を終えた頼もしい気持ちも語っていたので、お聞き逃しなく。
富田麻帆「歌詠み鳥」
ウグイスを意味する「歌詠み鳥」。銀行受付の京子はいつもの流れ作業をこなしている。
そんな時、新しいお客が来たと思ったらまさかの事件?いや運命の出会い!?
緊張感のある噺も、彼女にかかればポップに変わる。枕から圧倒的なテンポ感で会場をすぐに自分のフィールドにし、アドリブだってお手の物。
京子とその心の内の声とのギャップの演じ分けには、盛大に笑いつつも圧巻の一言だ。
前回出演から4年ぶりに現代落語の世界へ舞い戻ったその姿は、「これが麗和落語か」とうなずきたくなるほど。とくとご覧あれ。
公演の最後にはおまけとしてキャスト全員でのトークタイムがあるので、そちらも忘れず楽しんでほしい。
最初から最後まで存分に笑える構成となっている「麗和落語」。まだこの世界に触れたことのない方も、これを機にぜひ新たな笑いの扉を開けてみてはいかがだろうか。
配信は、8月29日(木)10:00~9月4日(水)23:59の期間にZAIKOにて行われる。
▶︎ZAIKO配信ページは下記の通り↓
14:30公演
https://like-s.zaiko.io/item/366399
18:00公演
https://like-s.zaiko.io/item/366400
取材・文:今田夏見